うつ病や双極性感情障害等の初診日が明確にならないときに

障害年金コンサルタント、社会保険労務士の中島です。

今回は、うつ病や双極性感情障害等の初診日が明確にならないときに、という題で書いてみたい、と思います。

請求する障害年金の種類も障害認定日も明確にならない

以前、初診日が国民年金加入期間中にあるか、厚生年金保険加入期間中にあるか、で請求する障害年金の種類が異なる、という話をしました。

これは、初診日に、どの制度に加入していたか、という部分が問われるもので、初診日が20歳の誕生日の前日より前で、厚生年金保険に加入していない期間にある場合は、年金保険料を負担しなくても良い未加入の状態であるため、年金保険料の負担無しで請求できる「20歳前の傷病による障害基礎年金の請求」となり、初診日が20歳の誕生日の前日以後にあり、自営業や無職、学生さん等でお勤めをしていない時、もしくは、厚生年金保険に加入している方の扶養に入っている時で、国民年金のみの加入期間中にある場合は、国民年金の第1号被保険者、第3号被保険者という扱いのため、「障害基礎年金の請求」となり、厚生年金保険に加入していた期間中にある場合は、厚生年金保険被保険者であると同時に、国民年金第2号被保険者でもあることから、「障害給付として、障害基礎年金と併せて、障害厚生年金も請求する」形になる、というものです。

初診日が明確になることで、請求する障害年金の種類が決まり、請求に使用する請求書の種類等、揃える書類も決まり、その後の手続きの流れも決まります。

しかし、資料を収集した結果、初診日がどこになるかわからない、というケースもあります。

例えば、内科で不眠症と診断された中、心療内科を紹介され、うつ状態の診断を受け、現在は別の心療内科でうつ病として、通院されているような方です。

内科で不眠症の治療を受けておられた経過は、心療内科で取得した受診状況等証明書に記載があり、全体の治療としては、内科からメンタル関係の治療がスタートしているかのように見えます。

内科の初診日は、国民年金加入期間中、心療内科の初診日は、厚生年金保険加入期間中です。

初診日が明確にならないことから、障害認定日もわかりません。

障害基礎年金と障害給付(障害基礎年金・障害厚生年金)の同時請求

このような時、どのようにすれば良いでしょうか?

当事務所では、判断の対象となる重要な「時期」の、4.の期間の症状に基づき、障害基礎年金と障害給付(障害基礎年金・障害厚生年金)の同時請求をする、という方法をとっています。

敢えて、断定せず、実際の治療経過から、国民年金加入期間中、もしくは、厚生年金保険加入期間中、どちらの初診日が認められても良い形を取りつつ、積極的に申立てをする日を決め、病歴・就労状況等申立書を作成し、2枚の請求書を同時に、年金事務所に提出します。

(例に挙げた方については、国民年金加入期間中の初診日が否定され、厚生年金保険加入期間中の初診日が認められました。)

この方法であれば、請求関係書類を年金事務所に提出した日の属する月の翌月から支給開始となる事後重症による請求であっても、どちらか一方の初診日を断定して手続きを進めた挙句、申し立てた初診日が認められず、年金事務所より返戻され、改めて手続きをする中で生じる支給開始の遅れから、得られるはずであった年金が、減ってしまうリスクがありません。

現在の症状による請求を行った後に障害認定日による請求(遡及請求)をする

更に、同時請求で、日本年金機構等保険者に初診日を決めてもらえば、受給権が発生した後、そこから障害認定日を割り出し、改めて、障害認定日による請求(遡及請求)を行うことも可能です。

一度、現在の症状による請求を取り下げる、という形は取りますが(※)、取下げ書や、現在の症状による請求に際して提出した請求書の理由欄の内容との矛盾を解消する理由書等を作成し、改めて、障害認定日による請求(遡及請求)を行えば良いのです。

障害認定日が明確にならない中で、障害認定日による請求(遡及請求)を行う場合は、「おそらく、ここが障害認定日だろう」と、当て推量で、障害認定日時点の診断書を取得し、手続きを進めることになってしまいますが、この方法であれば、「申し立てた初診日が認められなかったら、どうすれば良いのだろう…」と不安になることや、当て推量で決めた障害認定日時点の診断書料も無駄になる可能性が低くなります。

(同時請求では無くても、初診日時点のカルテが破棄されていたりする場合で、資料を比較して、どちらが(もしくは、どこが)初診日になるか、比較することすらできない、という時でも、まず、おそらく認められるであろう、初診日を申立て、現在の症状による請求をし、受給権が発生した後、初診日が明確になってから、障害認定日による請求(遡及請求)を行うケースもあります。)

リスク

ただ、現在の症状による請求を行ってから、障害認定日による請求(遡及請求)を行う場合は、リスクがあり、以前書いた、障害年金の時効、のルールのとおり、障害認定日による請求手続きをする時点から5年分の遡り受給しか認められないことから、現時点から5年以上前に障害認定日がある場合は、現在の症状による請求で、受給権が発生した後、障害認定日による請求手続きをするまでの間に、現在の症状による請求で発生した受給権により支給された期間(もしくは、支給されることとなる期間)の分の年金は、障害認定日による請求手続きをする時点では、支給済み年金となり、遡って支給されたであろう年金が減ってしまうことがあります。

現時点から、障害認定日が2~3年程度前、ということであれば、気にする必要はありませんが、5年近く前、ということであれば、時効消滅を意識して、現在の症状による請求はもちろんのこと、障害認定日による請求も、現在の症状による請求で受給権が発生した後、速やかに手続きすることが必要です。

ごくたまに、現在の症状による請求で受給権が発生し、支給開始から5年以上経過して、受給権発生後でも障害認定日による請求を行うことができることを知ったお客様から、「どうにか遡及請求を行うことができませんか?」とお問い合わせをいただくことがあるのですが、この場合は、「障害年金の時効のルールから、同一のご病気やお怪我の関係であれば、手続きをしてもメリットがありませんよ。」とお伝えしています。

当事務所では、お客様の治療経過、資料の収集状況等から、社会保険諸法令、現在までの知見により、あらゆる角度で、最適な手続き方法のご提案を行います。

何か不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

よろしくお願いいたします。

※これによる失権はありません。

参考判例

最高裁判例 平成29(行ヒ)44 障害年金請求事件 平成29年10月17日

こちらのコラムもご参照ください

初診日についての誤解

精神の障害厚生年金についての感想

障害年金の審査の対象となる重要な「時期」

参考条文

国民年金法

第二章 被保険者

(被保険者の資格)
第七条 次の各号のいずれかに該当する者は、国民年金の被保険者とする。
一 日本国内に住所を有する二十歳以上六十歳未満の者であつて次号及び第三号のいずれにも該当しないもの(厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)に基づく老齢を支給事由とする年金たる保険給付その他の老齢又は退職を支給事由とする給付であつて政令で定めるもの(以下「厚生年金保険法に基づく老齢給付等」という。)を受けることができる者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者を除く。以下「第一号被保険者」という。)
二 厚生年金保険の被保険者(以下「第二号被保険者」という。)
三 第二号被保険者の配偶者(日本国内に住所を有する者又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者として厚生労働省令で定める者に限る。)であつて主として第二号被保険者の収入により生計を維持するもの(第二号被保険者である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者を除く。以下「被扶養配偶者」という。)のうち二十歳以上六十歳未満のもの(以下「第三号被保険者」という。)
2 前項第三号の規定の適用上、主として第二号被保険者の収入により生計を維持することの認定に関し必要な事項は、政令で定める。
3 前項の認定については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。

(資格取得の時期)
第八条 前条の規定による被保険者は、同条第一項第二号及び第三号のいずれにも該当しない者については第一号から第三号までのいずれかに該当するに至つた日に、二十歳未満の者又は六十歳以上の者については第四号に該当するに至つた日に、その他の者については同号又は第五号のいずれかに該当するに至つた日に、それぞれ被保険者の資格を取得する。
一 二十歳に達したとき。
二 日本国内に住所を有するに至つたとき。
三 厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができる者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者でなくなつたとき。
四 厚生年金保険の被保険者の資格を取得したとき。
五 被扶養配偶者となつたとき。

(資格喪失の時期)
第九条 第七条の規定による被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日(第二号に該当するに至つた日に更に第七条第一項第二号若しくは第三号に該当するに至つたとき又は第三号から第五号までのいずれかに該当するに至つたとき(第四号については、厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができる者となつたときに限る。)は、その日)に、被保険者の資格を喪失する。
一 死亡したとき。
二 日本国内に住所を有しなくなつたとき(第七条第一項第二号又は第三号に該当するときを除く。)。
三 六十歳に達したとき(第七条第一項第二号に該当するときを除く。)。
四 厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができる者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者となつたとき(第七条第一項第二号又は第三号に該当するときを除く。)。
五 厚生年金保険の被保険者の資格を喪失したとき(第七条第一項各号のいずれかに該当するときを除く。)。
六 被扶養配偶者でなくなつたとき(第七条第一項第一号又は第二号に該当するときを除く。)。
3 前項の認定については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。

厚生年金保険法

第二章 被保険者
第一節 資格

(適用事業所)
第六条 次の各号のいずれかに該当する事業所若しくは事務所(以下単に「事業所」という。)又は船舶を適用事業所とする。
一 次に掲げる事業の事業所又は事務所であつて、常時五人以上の従業員を使用するもの
イ 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
ロ 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
ハ 鉱物の採掘又は採取の事業
ニ 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
ホ 貨物又は旅客の運送の事業
ヘ 貨物積みおろしの事業
ト 焼却、清掃又はと殺の事業
チ 物の販売又は配給の事業
リ 金融又は保険の事業
ヌ 物の保管又は賃貸の事業
ル 媒介周旋の事業
ヲ 集金、案内又は広告の事業
ワ 教育、研究又は調査の事業
カ 疾病の治療、助産その他医療の事業
ヨ 通信又は報道の事業
タ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める社会福祉事業及び更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)に定める更生保護事業
二 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの
三 船員法(昭和二十二年法律第百号)第一条に規定する船員(以下単に「船員」という。)として船舶所有者(船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第三条に規定する場合にあつては、同条の規定により船舶所有者とされる者。以下単に「船舶所有者」という。)に使用される者が乗り組む船舶(第五十九条の二を除き、以下単に「船舶」という。)
2 前項第三号に規定する船舶の船舶所有者は、適用事業所の事業主とみなす。
3 第一項の事業所以外の事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受けて、当該事業所を適用事業所とすることができる。
4 前項の認可を受けようとするときは、当該事業所の事業主は、当該事業所に使用される者(第十二条に規定する者を除く。)の二分の一以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請しなければならない。
第七条 前条第一項第一号又は第二号の適用事業所が、それぞれ当該各号に該当しなくなつたときは、その事業所について同条第三項の認可があつたものとみなす。
第八条 第六条第三項の適用事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受けて、当該事業所を適用事業所でなくすることができる。
2 前項の認可を受けようとするときは、当該事業所の事業主は、当該事業所に使用される者(第十二条に規定する者を除く。)の四分の三以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請しなければならない。
第八条の二 二以上の適用事業所(船舶を除く。)の事業主が同一である場合には、当該事業主は、厚生労働大臣の承認を受けて、当該二以上の事業所を一の適用事業所とすることができる。
2 前項の承認があつたときは、当該二以上の適用事業所は、第六条の適用事業所でなくなつたものとみなす。
第八条の三 二以上の船舶の船舶所有者が同一である場合には、当該二以上の船舶は、一の適用事業所とする。この場合において、当該二以上の船舶は、第六条の適用事業所でないものとみなす。

(被保険者)
第九条 適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。
第十条 適用事業所以外の事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生労働大臣の認可を受けて、厚生年金保険の被保険者となることができる。
2 前項の認可を受けるには、その事業所の事業主の同意を得なければならない。
第十一条 前条の規定による被保険者は、厚生労働大臣の認可を受けて、被保険者の資格を喪失することができる。

(適用除外)
第十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、第九条及び第十条第一項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。
一 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であつて、次に掲げるもの。ただし、イに掲げる者にあつては一月を超え、ロに掲げる者にあつては所定の期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。
イ 日々雇い入れられる者
ロ 二月以内の期間を定めて使用される者
二 所在地が一定しない事業所に使用される者
三 季節的業務に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)。ただし、継続して四月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
四 臨時的事業の事業所に使用される者。ただし、継続して六月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
五 事業所に使用される者であつて、その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者(当該事業所に使用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に使用される者にあつては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該者と同種の業務に従事する当該通常の労働者。以下この号において単に「通常の労働者」という。)の一週間の所定労働時間の四分の三未満である短時間労働者(一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い者をいう。以下この号において同じ。)又はその一月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の一月間の所定労働日数の四分の三未満である短時間労働者に該当し、かつ、イからニまでのいずれかの要件に該当するもの
イ 一週間の所定労働時間が二十時間未満であること。
ロ 当該事業所に継続して一年以上使用されることが見込まれないこと。
ハ 報酬(最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第四条第三項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除く。)について、厚生労働省令で定めるところにより、第二十二条第一項の規定の例により算定した額が、八万八千円未満であること。
ニ 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十条に規定する高等学校の生徒、同法第八十三条に規定する大学の学生その他の厚生労働省令で定める者であること。

(資格取得の時期)
第十三条 第九条の規定による被保険者は、適用事業所に使用されるに至つた日若しくはその使用される事業所が適用事業所となつた日又は前条の規定に該当しなくなつた日に、被保険者の資格を取得する。
2 第十条第一項の規定による被保険者は、同項の認可があつた日に、被保険者の資格を取得する。

(資格喪失の時期)
第十四条 第九条又は第十条第一項の規定による被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日(その事実があつた日に更に前条に該当するに至つたとき、又は第五号に該当するに至つたときは、その日)に、被保険者の資格を喪失する。 一 死亡したとき。
二 その事業所又は船舶に使用されなくなつたとき。
三 第八条第一項又は第十一条の認可があつたとき。
四 第十二条の規定に該当するに至つたとき。
五 七十歳に達したとき。

(被保険者の種別の変更に係る資格の得喪)
第十五条 同一の適用事業所において使用される被保険者について、被保険者の種別(第一号厚生年金被保険者、第二号厚生年金被保険者、第三号厚生年金被保険者又は第四号厚生年金被保険者のいずれであるかの区別をいう。以下同じ。)に変更があつた場合には、前二条の規定は、被保険者の種別ごとに適用する。

この記事を書いた人

中島 孝周(なかじま こうしゅう)

聖学院高等学校、青山学院大学経済学部経済学科卒業
団体職員、都内社会保険労務士事務所勤務を経て、「障害年金の魅力を伝え、多くの人に安心を届けたい」という願いから、2018年11月、「精神」「知的障害」の分野を専門として、障害年金業務に特化した「こうしゅう社会保険労務士事務所」を開業。

現在までに、「精神」「知的障害」の分野のみで、350件以上の請求代行実績がある。

1980年8月2日 栃木県小山市出身
家族:妻 長男

ページトップへ
Menu

お気軽に無料相談をご利用下さい。
平日 9:00~18:00(土日祝休み)

Close

無料相談 お問い合わせ

平日 9:00?18:00 (土日祝休み)03-6261-7313