障害年金請求思い出3選(死後の請求、未納ONLY、ギリ)

障害年金コンサルタント、社会保険労務士の中島です。
本当に小さな事務所ですが、色々なお問い合わせをいただき、都度、真摯にご対応させていただいております。現在までに記録している直近2000件のご相談内容を整理、振り返る中、思い出に残っている方を紹介します。

死後の請求

「妻が自殺してしまいました。」というお問い合わせがあり、遺族年金の請求をしつつ、過去の症状に関する診断書を取り寄せ、障害年金としては、障害認定日による請求を行う、という方針で手続きを進めていた方がいました。障害年金については、死後であっても、障害認定日時点のカルテがあれば、その時点の診断書によって障害年金の請求を行うことができます。

ご本人様がお亡くなりになっていても、さかのぼり受給が決まれば、何か少しでも、今後の助けになったのだと思います。

しかし、現実は厳しいものでした。

旦那様から聞いていた治療経過に基づき、資料の収集をしていくと、ご結婚される前からメンタル関係の治療をされていて、当初の想定より遥か前の時点に初診日があることが分かりました。かなり無理な形で請求手続きを進めましたが、障害認定日の時点においては、通院はされていても、障害等級に該当するような状態ではなく、結果、不支給となりました。

長い結婚生活の中で、ご夫婦の間でもお話していなかったことがあり、そのことを、私の方が先に知ってしまう、という出来事から、この仕事は正直、大変だな、と感じたことを今でも覚えています。

公的な給付に関しては、遺族年金が残ったことが、唯一の救い、と解釈せざるを得ない出来事でした。

未納しかない中で

この未納を示す記号(*)だらけの納付記録を年金事務所窓口で確認し、「これは大変だ」と思ったことを覚えています。(お問い合わせの段階で、どういう意図なのか、未納は無い、とおっしゃっていましたから。)それでも、この方については、受給権発生まで手続きし、5年分のさかのぼり受給にもなっています。障害年金に詳しい方であれば、「20歳前の傷病による障害基礎年金だろう。」と考える方もいると思います。しかし、この方は20歳前傷病として手続きしていません。

法令上、

国民年金法 (支給要件)

第三十条 障害基礎年金は、疾病にかかり、又は負傷し、かつ、その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が、当該初診日から起算して一年六月を経過した日(その期間内にその傷病が治つた場合においては、その治つた日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至つた日を含む。)とし、以下「障害認定日」という。)において、その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに、その者に支給する。ただし、当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。

とあり、但し書きにあるとおり「初診日の属する月の前々月までに被保険者期間」がある方は、保険料納付済期間と保険料免除期間を問われることになっています。

日本に住んでいる場合、国籍を問わず、20歳の誕生日の前日のある月から国民年金への加入が義務となっていますが、この方は、20歳の誕生日の前日のある月の翌々月に初診日があり、「初診日の属する月の前々月までに被保険者期間」の無い方でした。加入直後に初診日があるため、保険料について問われることがなく、20歳前傷病に基づく障害基礎年金でもない、というケースです。尚、20歳到達以後、1年6か月程度は、未納のままですが、障害基礎年金2級の受給権が発生し、今はほとんど全てが法定免除となっています。今後、ご病気が回復され、仮に65歳以降に老齢基礎年金を受給することになっても、法定免除期間は半額納付扱いとして記録され、その分の年金額は老後の安心に繋がるはずです。

あと1日遅かったら

請求手続き自体は、障害基礎年金2級で受給権が発生し、現在も受給中の方ですが、この方も、納付記録を年金事務所窓口で受け取った際、「これは際どい」と思ったことを覚えています。法令上、

第九十条 次の各号のいずれかに該当する被保険者等から申請があつたときは、厚生労働大臣は、その指定する期間(中略)に係る保険料につき、既に納付されたものを除き、これを納付することを要しないものとし、申請のあつた日以後、当該保険料に係る期間を第五条第三項に規定する保険料全額免除期間(第九十四条第一項の規定により追納が行われた場合にあつては、当該追納に係る期間を除く。)に算入することができる。(中略)
2 前項の規定による処分があつたときは、年金給付の支給要件及び額に関する規定の適用については、その処分は、当該申請のあつた日にされたものとみなす。

第九十条の三 次の各号のいずれかに該当する学生等である被保険者又は学生等であつた被保険者等から申請があつたときは、厚生労働大臣は、その指定する期間(学生等である期間又は学生等であつた期間に限る。)に係る保険料につき、既に納付されたものを除き、これを納付することを要しないものとし、申請のあつた日以後、当該保険料に係る期間を第五条第三項に規定する保険料全額免除期間(中略)に算入することができる。
(中略)
2 第九十条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
3 第一項第一号に規定する所得の範囲及びその額の計算方法は、政令で定める。

となっています。この「申請のあつた日にされたものとみなす。」という部分がポイントです。

この方の学生納付特例の申請日は平成23年3月30日、初診日は平成23年3月31日でした。本当に、あと1日、学生納付特例の申請が遅れていれば、「当該傷病に係る初診日の前日において」、20歳の誕生日の前日のある月から「当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間」がありますから、ここは全て未納、という結果になっていたのです。

まとめ

初診日が想定より遥か前の時点にあった場合、納付や免除申請の状況等、当事務所が関与する前に起きている出来事を整理して、全ては法令に基づき、「事務」として、どう進めるか、という点から考えながら、日々、色々な方と向き合っていますが、何とかなる場合とならない場合があります。

特に、国民年金保険料が未納となること、免除申請が遅れることは決して良いことではありませんので、保険料の問題は簡単に考えず、一人一人が真剣に向き合っていただくことを願っています。

参考

国民年金保険料の学生納付特例制度

この記事を書いた人

中島 孝周(なかじま こうしゅう)

聖学院高等学校、青山学院大学経済学部経済学科卒業
団体職員、都内社会保険労務士事務所勤務を経て、「障害年金の魅力を伝え、多くの人に安心を届けたい」という願いから、2018年11月、「精神」「知的障害」の分野を専門として、障害年金業務に特化した「こうしゅう社会保険労務士事務所」を開業。

現在までに、「精神」「知的障害」の分野のみで、350件以上の請求代行実績がある。

1980年8月2日 栃木県小山市出身
家族:妻 長男

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