障害年金の支給調整

障害年金コンサルタント、社会保険労務士の中島です。

今回は障害年金の支給調整の話をしてみたいと思います。

お客様のケースで多いものが、既に傷病手当金を受給されている方です。

こちらと障害年金でどうなるか説明します。
(前提として、ここでは報酬や出産手当金、共済組合からの給付を考慮しません)

まず、「傷病手当金の額」より「障害厚生年金の額(さらに同じ支給事由で障害基礎年金もある場合は、その額も含む)」(以下、「障害厚生年金の額」とします。)が大きい、もしくは同額の場合ですが、この場合、「障害厚生年金の額」のみが手元に残り、「傷病手当金の額」はゼロとなります。

つぎに「傷病手当金の額」が「障害厚生年金の額」より大きい場合ですが、「傷病手当金の額」は、「障害厚生年金の額」だけ減額し、差額が手元に残り、「障害厚生年金の額」も手元に残ります。

(つまり両者の合計で、手元に残るのは結局、元の「傷病手当金の額」になります。)

ここで大事なことは、支給調整は

傷病手当金の支給事由と同じ負傷や疾病で支給される障害厚生年金を受給する場合

かつ

支給期間が重複している時期の金額

に対してされるものであって、

  1. 支給期間が重複していない場合
  2. 傷病手当金と「障害基礎年金のみ」を同時に受給する場合
  3. 傷病手当金の支給事由と無関係の負傷や疾病が支給事由の障害厚生年金を受給している場合

は支給調整は無い、ということです。両方ともそのまま手元に残ります。

さらに、気を付けなければならないことは、傷病手当金の支給調整はリアルタイムではなく、後日、健康保険組合や協会けんぽから返還請求の通知が届き、精算する形になっている為、一時的には両方の金額が口座に入ることになる点です。

支給調整を考えないで、お金を使ってしまうと返還請求が来た時に支払いができない、という問題が生じてしまうのです。

尚、「傷病手当金の額」と「障害厚生年金の額」においては、1日あたりの金額で比較する必要があり、「傷病手当金の1日あたりの金額」は

支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3
(下線部分の結果は5円未満切り捨て、5円以上10円に切り上げ。太字部分の結果は50銭未満切り捨て、50銭以上1円に切り上げ)

「障害厚生年金の額の1日あたりの金額」は

年金額÷360(円未満切り捨て)

となり、この計算の後、差額を出すことになります。

傷病手当金を受給中の方には、支給期間の終了直前になって、障害年金の請求を検討される方がおられます。

障害年金は手続き開始から受給までおおむね半年はかかるため、傷病手当金の支給期間の終了直前では家計に穴が空いてしまうことにもなりかねません。

早めの相談をお願いします。

次回も障害年金の支給調整の話をします。

参考資料

健康保険法

(傷病手当金)

第九十九条 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

2 傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。以下この項において同じ。)を平均した額の三十分の一に相当する額(その額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)の三分の二に相当する金額(その金額に、五十銭未満の端数があるときは、これを切り捨て、五十銭以上一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)とする。(以下、省略)

4 傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して一年六月を超えないものとする。

(傷病手当金又は出産手当金と報酬等との調整)

第百八条
3 傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき厚生年金保険法による障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金は、支給しない。ただし、その受けることができる障害厚生年金の額(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づき国民年金法による障害基礎年金の支給を受けることができるときは、当該障害厚生年金の額と当該障害基礎年金の額との合算額)につき厚生労働省令で定めるところにより算定した額(以下この項において「障害年金の額」という。)が、第九十九条第二項の規定により算定される額より少ないときは、当該額と次の各号に掲げる場合の区分に応じて当該各号に定める額との差額を支給する。

健康保険法施行規則

(法第百八条第三項ただし書及び第五項ただし書の厚生労働省令で定めるところにより算定した額)

第八十九条 法第百八条第三項ただし書の厚生労働省令で定めるところにより算定した額は、同項に規定する者の受けるべき障害厚生年金の額(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づき障害基礎年金の支給を受けることができるときは、当該障害厚生年金の額と当該障害基礎年金の額との合算額)を三百六十で除して得た額(その額に一円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てた額)とする。

この記事を書いた人

中島 孝周(なかじま こうしゅう)

聖学院高等学校、青山学院大学経済学部経済学科卒業
団体職員、都内社会保険労務士事務所勤務を経て、「障害年金の魅力を伝え、多くの人に安心を届けたい」という願いから、2018年11月、「精神」「知的障害」の分野を専門として、障害年金業務に特化した「こうしゅう社会保険労務士事務所」を開業。

現在までに、「精神」「知的障害」の分野のみで、350件以上の請求代行実績がある。

1980年8月2日 栃木県小山市出身
家族:妻 長男

ページトップへ
Menu

お気軽に無料相談をご利用下さい。
平日 9:00~18:00(土日祝休み)

Close

無料相談 お問い合わせ

平日 9:00?18:00 (土日祝休み)03-6261-7313